死にたがりの少女をさらった愛することを忘れた狐

この世界は

人間界と妖怪たちの世界の狭間だと、教えてもらった

狐さんの名前はまだ教えて貰ってない

「いづみ、ここでは何をしても構わん。
だが、死ぬことだけは許さない、もしそんな行動を取ってみろ。俺がお前を殺してやる」

ゾクリとした

本当に殺されてしまうとおもった

気まぐれで私は彼に命を救われた?

もしこれで私がまた死のうとしたら彼の恩を無駄にしてしまうのかな

狐さんはそれだけ言うと奥へと消えてしまった

ここはどこかの屋敷のようで、庭があったり大きな橋があったり

私が居る部屋はとても広い

おそらく、寝室であろうここの部屋には霧箪笥と小さなテーブルが備えてあった

寝室を抜けるとそこは畳ばりの客室があって、奥にはこたつがある。

テレビまであって驚いたけど

「すごーい・・・」

試しにテレビを付けてみる

映し出されたのは人間界でよく目にする番組ばかりだった

「あ、うちにテレビなかったんだっけ」

うちにはテレビは無かった

あの人が必要ないと言って置かなかった

なので、学校や病院でしか見たことがやかった

相変わらず不景気だとか、流行とか、事件なんかを取り上げてる

私の事は取り上げられてなかった

あの狐さんがなにかしてくれたのかな

「いづみ。」

「はい?」

「風呂に入ってこい」

言われるがまま、浴室へと向かう

「気持ちいいなー」

とても良い香りのする温泉だった

桜色の浴槽にふんわりと鼻を霞む甘い香り

頭と体を洗って浴室へと出ると、バスタオルと下着、衣服が置いてあった

「いづみ様、こちらにお召し物を置いておきました!」

「あ、ありがとう」

そこに居たのは小さな狐の女の子みたいな子だった

その子は頭下げて浴室を出て行った

部屋に戻ると狐さんが楽しそうにお酒を飲んでいた


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