弱い私も受け入れて
「お返し」
そう言うと同時に、背伸びをして彼の頭をガシガシと揺らすように撫でた。優しく撫でてくれた彼とは違って、ちょっと乱暴に。
「ちょっ……髪が乱れるじゃないですか」
ブツブツと文句を言いながら、彼は手櫛で髪を戻している。なんだかそんなやり取りがとても楽しくなって、声を出して笑った。
……よかった、ちゃんと笑える。また、頑張れそうに気がする。
「帰ろうか……健一君」
彼の返事は待たずにさっさと荷物を持つと、電気を消して1人でスタッフルームを後にした。もちろん暗闇の中に彼を置き去りにして。
「待って下さい」とか「もう一回呼んで」とか、声が後ろから聞こえているけれどそれは無視、無視。帰ったらちゃんと曝け出してあげるから、ここでは決して人に見せない内側も。
固く閉ざされた心の鍵をその手で優しく開いてよ。だから……早く帰ろう、2人で一緒に。
『弱い私も受け入れて』Fin.

