イジワル上司に恋をして

「でも、びっくりしたわ。本当に。まさか優哉がいるなんて」


女性の方が積極的に会話を投げかけてるけど、アイツは全く口を開く様子がない。


「しかも、ものすごい物腰柔らか~く笑ったりして。初めは他人の空似かと思ったくらいよ?」
「お待たせ致しました」


そこまで言ったときに、コーヒーが運ばれて来たようで、店員が声を掛ける。
カチャカチャッと、コーヒーを二つ置く音がすると、店員が「ごゆっくりどうぞ」と去って行った。


「優哉から誘ってくれるなんて。すごくうれしい」


……なんだって?! ヤツがこの素敵女性を誘ったのか!
さすが、手の早い男は違うな! ……でも、この二人はなんだか知り合いみたい……?


「べつにそういう理由じゃない。職場で馴れ馴れしくされるのが迷惑だっただけだ」
「冷たいなぁ。さっきとはまるで別人ね? あ、でも、そういうなら、さっきの優哉の方が別人……」
「もう関係ないだろ。ほっとけよ」


ぴしゃりと言い捨てた黒川の声に、背筋が伸びる。
べつにわたしに言われてるものじゃないってわかってても、あまりに素っ気ない態度に心が凍りそうだ。

それにしても、後ろの女性はなんだろう。
元カノ……ってセンが一番濃いよね……。美人だったし。アイツもあれでイケメンだから、お似合いの風貌なんだけど。

でも、それにしては冷たくない?
ああ、それがアイツの素だからか……いやいや、それにしても、普段わたしの前で出すキャラよりも、数倍クールな気が……。

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