イジワル上司に恋をして

ああ……なにしてんだろ、わたし。

なんとなく、西嶋さんと付き合うことにして。
それを、あの男に見透かされたようなことを言われて。挙句、わけもわからないままキスまで許して……って、どうかしてるよ。

だけど……今日の、あのキス。

あの前後から、黒川がちょっとおかしかったような……?
口では乱暴なことばっかり言ってても、態度にそれが出てなかった、っていうか。
むしろ、深く、優しいキス……って、なにを考えてんの、わたし!


ガバリと起き上がって、クッションを抱えると頭を横に振る。


ダメだ。やっぱりなんか、ヘン。
由美におかしなことを吹き込まれたからだ、ゼッタイ。


わたしは布団に入ると、掛け布団を頭まですっぽりかぶって目を強く閉じた。
今、なにかを考えたところでまともな思考になんかならない。


もうさっさと寝よう。
明日になったらきっと、冷静なわたしになってるはず。


そう考えてとった行動だけど、結局寝付くまでに相当な時間を要してしまって……。
目を開ければ眠れないし、目を閉じればあの男の顔が浮かんできて。

途中、携帯の着信音が聞こえたけど、それを取りに行くこともせずに、ただひたすら眠ることだけに集中して夜が更けていった。

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