イジワル上司に恋をして
「うちの大事なモン、穢すなよ」


職場で恋なんてするもんじゃない。
上手くいっていれば話は別なのかもしれないけど、今のわたしの状況ともなると最悪だ。
それでも唯一救われるのは、アイツはブライダルで、わたしはショップということだ。

今日もそれなりに忙しそうなブライダル部は、あちこち行き来して話すような機会もない。
加えて今日は美優ちゃんが休み。
あの話題を振られたら困るからちょうどよかった。

……それにしても。

ブライダルって本当に忙しいとこだなぁ。
でも、来るお客さんのほとんどが幸せそうで。昨日の花嫁さんもそうだけど、あんなふうに笑顔を浮かべてくれるお手伝いが出来るなんて、やりがいありそう。


ここ最近、なんだかブライダルの仕事を垣間見てるような気がしてそう思う。

それは、黒川が色々とそっちの仕事にわたしを連れ出したりしたからだ。
でも、正直その件については嫌だと思ったことはないかもしれない。
むしろ、ちょっとわくわくとするような気持ちになる。


「でも、そればっかじゃないよね」


良い部分だけじゃない。それはブライダルに限ってではないことだけど。
お客さんが喜んでくれたりすることもあれば、クレームだったり割に合わないような仕事量のときだったりだってあるはずだし。

ガラス越しのサロンをぼんやりと見つめ、そんなことを漠然と考えてるうちに時間が過ぎていった。

隣とは違って、一日平和だったショップだけど、閉店間際に驚くことが起きる。

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