イジワル上司に恋をして
そ、そうか。え? じゃあだから、由美はさっきやたらと喜んで……。


「もしかして……それ、期待してた……?」
『んー。まぁ、ちょっとだけ! なの花の彼氏になってくれたら、頼みやすいこともあるなぁってね』


はぁ。しっかりしてるね、由美は……。
感心しながら、「あんまり期待しないでね」とだけ念押しして、希望の日時とかだけを先に聞いて電話を切った。


「……ふー」


ようやく落ち着いた。
……実は、さっきからそわそわとしてた。

コレが、アイツからの〝御礼〟なら、中身は一体何だろうって、気になりすぎて。
でも電話しながら紐を解くのもなんだか出来なくて、やっと今、それと向き合える。


「……開けて、飴いっことかだったら、明日超絶甘いコーヒー飲ませてやるんだから」


小さな箱に、どうしても〝いい〟期待をしてしまう。
そんな自分をごまかすように、わざと声に出して言った。

しゅるっとブラウンの紐を横に引き、ゆっくりと箱を開ける。


「――――っ……」


予想もしなかったものがそこにはあって、『信じられない』という思いで固まってしまう。
瞬きをし、そっと手に取ると、尋常じゃないくらいに顔が綻んでしまう。
笑いを堪えようとしても無理なくらい。

きっと、今のわたしをアイツが見たら、『気持ち悪い』って言うかもしれない。

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