イジワル上司に恋をして

「ま、どうでもいいけど。そんなんで表出られたら迷惑だから、早いとこ取り替えて来いよ」
「……」
「それとも、脱がしてほしい?」
「――ん、なわけないでしょっ……!」


わたしをからかって遊んでるって、すぐ気付くことなのに、その瞬間は超本気にして答えてしまう自分が憎い。
破れたストッキングを覆うように、前屈姿勢で足元を手で覆いながらそう思う。


黒川は、『またバカやってる』と言ったような目で笑いながら、サロンの方へ戻ろうと踵を返した。


あー……もう! やられた。完璧に遊ばれた。
どうして一瞬でも、あの営業スマイルに夢見ちゃったんだ、わたし!


「くー」っと悔しい思いを前面に出していたら、黒川はまだそこにいて。
最後まで恥ずかしいところを見られてしまった、と顔をあげると、黒川が言った。


「どうせ、“西嶋くん”のことでも妄想してたんだろ」
「べべべべつにっ」
「バカだな、ホント。わかりやす過ぎ。なに? あの男のこと、好きなの?」
「た、ただの大学の先輩ですっ」


ああ、なの花! そんなわかりやすい返事をしたら、アイツになんてすぐバレるでしょ!


自分の失態を、今すぐにでも取り消したい。でも、そんなことが叶うわけもない。

黒川は笑うでもなく、じっとわたしの顔を見たまんま。
この時間がとてつもなく居心地が悪い。


「あー、じゃ、わたしトイレで着替えてきま――」
「仕事中、西嶋くんでピンク色の頭のまんま、ボケっとすんなよ」


席を立ったわたしにひとこと吐き捨てて、黒川は颯爽と戻っていった。
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