イジワル上司に恋をして


黙々と熨斗をつけていくこと10分。

単純作業はいいんだけど、問題なのは、コイツと二人きりってこと!
こんな危ないやつと残業なんて、普段なら絶対、ぜーったいしないけど、今回は香耶さんのため……!

……あれ? でも、なんで熨斗をわざわざ別なとこに発注かけてまでこんな作業してるわけ? メーカーから納品されたときは既に整ってたのに。


「……あの、なんで熨斗がついてないんですか?」


簡易テーブルに、熨斗をつけた引き菓子を並べて聞くと、黒川が口を開いた。


「――バカ?」
「ばっ……な、ちょっと気になっただけじゃないですか!」


わたしが手を止め、ムスッと返すと、盛大な溜め息をつかれた。
そして、手を休めることのない黒川は、そのまま淡々と説明し始める。


「こっちは無理言って、急な注文してんのに、『熨斗もお願いします』なんて言えるわけねーだろ、タコ」
「うっ……」
「それに。3か所から集めてんだ。仮に熨斗付きだったとしても、紙やら印字やら、若干の差異が出ても困るだろ、単細胞」
「ううっ……」


とっても簡単な答えが返って来て、わたしはぐうの音も出ずに、視線が下がっていく。
さすがにこの件に関しては、なにも言い訳出来ずにいた。


「オマエさぁ」


その呼び方に、『あぁん?!』とでも、本当は返したいくらいだけど、現実にはそんなこと出来ないから。
せめてもの反抗心で、顔を上げないまま、素っ気なく返事をする。


「……なんですか」


明日に備えて、本当にブライダルには誰ひとりいないから、当然のように悪い顔しか出さない黒川。


もしかして、その使いわけのストレスをわたしにぶつけてんじゃあないの? 勘弁してよ!
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