幼なじみ〜近くて遠い恋の距離〜



「なっ、何だよいきなり。テンション低いぞ!お前らしくないじゃん」


明るく振る舞うことしかできなかった。

こんな涼を見たのは初めてだったからかもしれない。


「…ごめん」

「なんで謝るんだよ」

「ごめん」


謝る必要もないのに、涼は俺にまた謝って。



「帰るわ…」


そう言って部屋を出ていく。



「涼」


思わず呼び止めて。


「ゲーム」

「えっ?」

「一回勝負してから帰れよ」


そう言って帰ろうとする涼を引き止めた。



「うわっ、くっそ」

「ちょっ、ハル弱すぎ」


それから俺たちは、肩を並べて画面の前で必死こいてゲームをした。

笑いながら余裕をかます涼に少しだけホッとしたりしながら。


そして約束の一回が終わると、さっきよりも元気になった気がした涼が隣にいて。


上手い言葉なんて言えないけど、少しでも涼が元気になったと思うとそれだけで嬉しかった。



「あのさ、ハル」

「ん?」


テレビを見つめたまま、涼の言葉に耳を傾けた。



「俺、最近イライラするんだ」

「何に対して?」

「何に…何に対してなんだろうな」

「ははっ、何だよそれ。もしかして岡崎にか?」

「岡崎にイライラしてるとかじゃない…かな。岡崎に対しても…まぁ、色々思うことはあるけど」


涼はそう言うと、ゲームのコントローラーをぽんっとそこに置いてそのままゴロンと床に寝転がった。

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