もしも君と恋ができたら
この気持ちは、何年も前に味わったはずだ。
そう、あの日。
鉛色の空から、白い雪がちらつく冬の日だった。
しょうくんが高3、わたしが中3のときで、駅でしょうくんと出くわした。
出くわしたというか、わたしが一方的に見たというか。
受験する高校を見学しに行こうとしていた日だった。
もちろんしょうくんの通っている高校で、もしかしたらしょうくんに会えるかな、なんてのんきに胸をときめかせていた。
電車に乗って、高校の最寄駅で降りた。
ホームに強い風が吹き込んで、髪が乱される。
乱れた髪をそっと抑えるわたしの目に飛び込んできたのは、しょうくんの姿。
会えたことに胸を高鳴らせたのも束の間、すぐにしょうくんの隣に誰かがいることに気づいた。
可愛いくて、スタイルのいい女の子。
彼女は蕩けるような笑顔を浮かべながら、しょうくんに甘えるような視線を向けていた。
そしてしょうくんも、応えるように優しい視線を彼女に向ける。
「……っ」
二人の絡んだ指を見た瞬間、わたしはホームから走り去った。
胸が苦しくて、体中に力が入らなくて、駅の待合室にあるベンチに座って、ぼんやりと床のタイルを見つめていた。
誰よりもしょうくんの近くにいた気がしたのに、いつの間にか手の届かないところに行ってしまったような気がした。
しょうくんはきっと、わたしのことなんか目に入っていない。
あんなに可愛い人にわたしなんかが敵うはず、ない……
堪えきれずにこぼした涙がタイルに落ちる。
泣いていることを人に知られないようにマフラーに顔を埋めて、涙が止まるまでずっとベンチに一人でいた。
それからだ。
しょうくんと本当に、顔を合せなくなったのは。