True Love
すると図書室のドアを開く音がした。ようやく今日の放課後最初の利用者さんが来たようだ。

私はその人の姿を見て心の中で「あ…」と呟く。そしてその人がカウンターの方を向いて目が合ったので「こんにちは」とあいさつをする。

「こんにちは。これ返却でお願い」

「はい、お預かりします」

その人とは原田先輩であった。先輩は分厚くて難しそうな本を一冊返却しに来て、またすぐその本の続巻の本を借りて行った。

先輩が図書室を出ていくと、それ以降利用者さんが来ることはなく、程なくしてカウンターの終了時間が来た。


私たちが校舎を出る頃、もう玄関のすぐ外などに生徒の姿はなかった。

「自転車取ってくるから先に行ってて」

「うん」

付き合い始めてから毎週水曜日は一緒に帰ることが多くて、今日も自然な流れで一緒に帰ることになった。

柴崎くんに言われた通りに先に歩いているとすぐに彼は自転車に乗って私のところまでたどり着く。

「後ろ乗って」

私は一瞬驚いて辺りを見渡す。いつもはみんなが下校する時に帰るので人も多く、自転車の後ろに乗せてくれるのは学校の外に出て人が少なくなってからだった。

だけど今日はもう人がいないから校門を出る前だったが乗せてくれるようだ。

「ありがとう、失礼します…」

柴崎くんの自転車の後ろに乗せてもらう時、私は未だに緊張してしまう。

「しっかり掴まってろよ」

私が彼の肩に掴まると自転車を走らせ始める。

寒くなってきたこの頃、肩に掴まる手から伝わる柴崎くんの体温がとても温かくて心地よかった。

もっと近づきたい、と掴まる部分を肩から腰の方に変えてみようかと思ったこともあったが、私にとってハードルが高いのでまだ一度も試したことはない。

しかし、最近そんなことを考える自分がとても恥ずかしくて、なんてふしだらなんだろうと思う。もっと近づきたいとか、手から伝わる体温が心地いいだなんて私が思うようになるなんて。

こんなこと言ったら、引かれちゃうんだろうな…。

心の中に秘めていようと決めた時、私たちは同じ学校の制服を着た人を1人追い越していった。

ぱっと顔を上げるとその人が原田先輩であったことに気が付いて慌てて「先輩、さようなら!」と言う。


その時、先輩は驚いたような顔をして私たちを見ていた。


「ん?さっきの先輩だったのか?」

「うん、原田先輩だったよ」

先輩の表情に少しどうしたのだろうかと疑問を持ったが、柴崎くんの問いかけに答えてから気にすることはなくなった。

そして柴崎くんは私の家まで送ってくれると、すぐにUターンして帰って行った。
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