センセイの白衣
第10章 その後
その後―――


私は、先生に約束した通り、頑張ったよ。

N大に来てよかったと思えるもの、いくつか見つけた。



N大に入学したばかりのとき。

「はるちゃんだよね?川上先生から聞いたよ!」

そう言って、色々教えてくれた先輩は、川上先生の教え子だった。



そして、学園祭に行ったあっきーも。

「川上先生、晴子のこと心配してたよ!もうー、晴子の話ばっかりなんだから!」

そんなこと言ってくれたっけ。



離れてるのに、どうして今も私の耳には、川上先生、っていう名前が聞こえてくるんだろう。

どこにいても、守られている気がするのは、なぜだろう―――



2年生になって、私はある、ちょっと有名な短歌の賞を取った。

大学生になってから、高校時代に私の歌を最優秀に選んでくれた先生に、師事するようになって。

そして、高校時代から作っていた50首の歌が、雑誌に掲載されたんだ。

それは、半分くらいが川上先生のことを詠んだものだったから、なんだか恥ずかしかったけど。

その賞のおかげで、私は何度か地方紙に載った。

後日、今お世話になっている大学の教授がこんなこと言ってくれたんだ。



「はるちゃん、新聞に載ったんだって?」


「え、どうしてご存じなんですか?」


「川上先生に聞いたよ。」



はっと息を呑んだ。

もう、2年も経ったのに。

川上先生の名を、大学にいてまた聞くなんて。

それに、新聞を見ていてくれたなんて―――


その教授は、川上先生の友達。

だから、川上先生の呼び方が移ったらしくて、いつも「はるちゃん」って呼ぶ。

それもまた、川上先生の名残りだ。


こんなふうに、川上先生の気配に囲まれて、大学生活を過ごしているんだ。

それが嬉しくて、ちょっぴり切ない。
< 141 / 144 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop