センセイの白衣
夏休み中は、倉木先生と短歌メンバーで集まって、何度も練習をした。

本番は、お題が出されて、決められた時間内で歌を詠む。

そして、壇上で2チームずつ対戦していく。

倉木先生がお題を出してくれて、私たちはいつも歌を詠んでは評し合っていた。


そして、迎えた本番の日。

2泊3日で、東北へ向かう。

私は緊張して、ご飯も食べられないくらいだった。



「はるちゃん、大丈夫?」


「大丈夫です。これがあるから。」



ボストンバックから出したのは―――



「何それ、化学?はるちゃん、ここに来て勉強する気?」



みんなに白い目で見られる。



「違うよ。これ。これを見れば私、頑張れる!」



この間、川上先生に質問をしたページ。

そこに残った、先生の几帳面な文字を眺めて、私はにやにやする。



「何それ、誰の字?」


「……内緒ー。」


「誰よ!」



みんなに突っ込まれて、にやにやしていると。



「川上先生でしょ。」


「……えっ、どうして。」


「分かるよー。いっつも仲良さそうだもん、はるちゃんと川上先生。」



倉木先生……鋭い。



「え、晴子は川上先生に化学聞いたわけ?」


「うん。」


「だって川上、生物の先生じゃん。」


「うん!」



友達に突っ込まれても、私は笑顔で頷く。



「何で?え?晴子、」


「だって、川上先生好きだもん。」


「え、えええーーー!晴子、あのおじさんが、」


「おじさんじゃないよ。先生の心はいつも、少年のようで……」


「はいはい、分かった!」



みんなにさえぎられても、川上先生がいかにかっこいいかについて語る私。

そんな私を、倉木先生はにこにこと見つめていた。


私は、川上先生を好きな気持ちを、誰かに隠そうなんて思わなかった。

みんなが知っていたっていい。

だって私は、川上先生が好きだと、胸を張って言えるから。


こんなにも、人を好きになったのは、初めて。

そのくらい、先生のこと、大好きだったから。



先生に、いい結果を持ち帰るためにも頑張ろうと思って、私は東北へ向かった。
< 36 / 144 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop