センセイの白衣

日々に幸せを

その日の生物の授業。



「えー、腎臓はこういう形をしていて、」



川上先生が、腎臓の模型の、腎臓のところを持つ。

それは危ないんじゃないかと思った瞬間。

スパコーン、と音がして、腎臓の支柱が取れた。



「あ、」



先生が、小さな驚きの声を上げる。


みんな眠いのか、授業に集中しているのか、反応した人はいなかったけれど。

私はなんだかツボに入ってしまって、声を出さずに肩を揺らしていた。


すると、先生とばしっと目が合って。



「笑うな。」



ちょっと笑いを含んだ声で、真顔の先生が言った。

腎臓を抱えてそんなことを言うから、またしても私のツボに入ってしまって。

笑いが止まらなくなってしまう。


そんな私に、呆れた目を向けながら、先生が腎臓を支柱に取りつけた。



「えー、それで、断面図はこうなっていて、……あ。」



また抜けてしまった支柱を、今度は手で押さえた先生。

もう我慢できない。

面白い。


笑っている私を見て、周りの人も笑いだして。

もう何が何だか分からなくなるくらい面白かった。


こんなどうでもいいことが、そんなに面白いなんて。

先生、ほんとに最高です。



「もういい。」



そう言って、支柱から腎臓を抜いてしまった先生に、笑いすぎて涙が出そうになった。

夏休み中、先生にほとんど会えなかったから。

久しぶりの感動って、すごい。


結局その授業は、腎臓の模型を見る度に笑ってしまうから、意識的に見ないようにしていたんだ。
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