センセイの白衣
そもそも、医学部を目指し始めたのは中学生のときだった。


ある病気が発覚したのは中1のとき。

そして、高1になるまでずっと、大学病院に通っていた。

途中で主治医が違う病院に移って、そこから私も別の病院に通うようになった。


主治医の先生は、とても優しい先生だった。


北風と太陽の太陽みたい。

いつでも、診察室は笑いが絶えなくて。

先生の言うことなら、何でも聞いた。

約束も守った。

だから、手術しなくて済んだんだ。


そんな先生には、とてもとても感謝している。

その先生に憧れたのがきっかけで、お医者さんを目指し始めた。

それは私にとって、自然なことだったのかもしれない。


中学生のとき、さほど成績がいいわけではなかった私。

でも、夢を持つようになってから、どんどん成績が上がった。

学年で100位だったのが、最高4位まで上がったのはちょっとした伝説になっている。



まあ、そんなことがあって、今の高校に来て。

本当は夢いっぱいのはずなのに。


ここに来て、どうしたらいいのか分からなくなってしまったんだ。

順調だったのに、なぜかひとりでに立ちすくんでしまったような感じ。



そもそも、すべてがうまく行き過ぎたのかもしれない。

敷かれたレールの上を歩くみたいな人生だと思ってしまったんだ。

自分で決めたはずなのに、なんだかそう思えなかった。

周りの人に応援されることに慣れてしまって。

いつの間にか、成績を上げることは、自分のためではなく親や周りのためになっていた。
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