Profession of the first and the last

#5.音楽室の住人は








何故かわからないまま、
小さい頃から習っていたピアノが

こんなふうに役に立つなんて!





僕はあの時そう思うほど喜んだ。


壊れかけのあのピアノに音をのせていると、


いつしかドアの隙間から顔を覗かせる
2つの影が現れるようになったんだ。



「おはよう」



お昼休みの30分間。


あの時間の僕だけは自然体だった。



僕がピアノを弾いて、
それを聴いてくれる友達がいて。



下手くそな僕のピアノを上手い、上手いって、
いつも褒めてくれた。




たとえそれがお世辞だったと
わかっていても、嬉しかった。



聴いてくれることが、

この場所に足を運んでくれることが、嬉しかったから。







僕らは3人、沢山の会話を交わしたね。


時にはもっとボロボロのピアノを使って
歌を歌うこともあったし、


3人で6手連弾をしたこともあったね。




音大受験を頑張れたのは、
もしかしたらあの時間があったからなのかもしれないよ。



背中を押してくれたから。



いつだって、2人は笑ってくれていたから。




いつだったかな?
新しい友達を連れてきてくれたこともあったよね?



僕を、光の中にいれてくれることが嬉しかったよ。



僕に友達を作る機会を与えてくれてありがとう。













音楽室の住人は。
僕は、救われた。












あの暗がりの狭い部屋でじっとしていた僕に、
光をあたえてくれたね。



ねぇ。


あの場所がなくなった今でも、
僕の光となってくれるかい?







< 9 / 18 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop