女達の戯言
『っらっさいあ~せ~』


俺が威勢よく声をあげると
いつもの女が入ってきた

その女はいつも一人でやってきて
いつも同じカウンター席の端に座り
そして、いつも同じものを頼む

『生中と奴と枝豆、あと串適当に』

俺はすかさず応える

『喜んで!』

いや、実は喜んでない
喜ぶ余裕なんてなかった
何故なら俺は目の前の女を
どうやって口説こうかとそればっかり
考えていたからだ

女は座ると同時にいつも煙草に火をつける
このご時世にしちゃ珍しい
この俺ですら禁煙したというのに…

しかし、上質のスーツで身を纏った女には
細い煙草の先から燻らされる煙すらも
粋だった

そう女はとにかく粋だった
そして堪らなく色気があった

ああ、抱きてぇ
少しムチッとした女の腰を思いきり
抱き寄せてみてぇな、オイ

俺は女が店に来る度に毎回そんな事を考えていた





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