女達の戯言
「フッフッ……あなた、バカじゃないの?
まぁ、いいわ。あなたと付き合ってあげる」


男は漸く許しを得た
罪人の様な顔で女を仰いだ


「じゃあ、さっそく行きましょうよ。
結ばれたいんでしょ?私に」


女は少し腰を上げ
向かいの席に座る男の耳に近づくと


ーーー私が本当にしたいのはね
結ぶんじゃなくて……






縛る事よーーー


口角を少し上げて笑うと
女は伝票を持ち
さっさと会計に行ってしまった


残された男は暫し考える


恐らく
女は男に考える時間を
与えたのだろう


女の席に残された
結び目の固まりを
じっと見つめる男


ざっとみても
10はある結び目


もしかしたら
女は結ぶ事で
何かを繋ぎとめたい
それだけなのかもしれない


男は意を決すると
女の後を急いで追いかけた


ただ少しだけ
女がほどく事も
知っているのだろうか
という不安を抱えながら







【結ぶ女】






< 4 / 61 >

この作品をシェア

pagetop