女達の戯言
いや、だからね
あたしもね
まさか、こんなことになるなんて
思ってもいやしませんよ。


だってそうでしょ?
まさかね
まさか、猫が
そう一匹の野良猫がね
お魚加えていったお陰で
私がこんなことになるなんて……。


えっ?
そんなバカな。


初めてに
決まってるじゃないですか。
そうそう、こんなこと
有りませんよ。


しかしながら
このご時世でしょ?
お魚一匹といえバカになりませんのよ。


必死に猫を追いかけましたわよ。


まぁ、猫の逃げ足の早いこと。


えっ?
なんで裸足で追っかけたのかって?


フッ
冗談よしてくださいな。


そんな分かりきった質問。


慌ててたんですよ。
慌てていたから
ツッカケすら履かなかった。


それだけですわ。


陽気ですって?


この私が?


とんでもない。


あたしはただ無我夢中で。


だってうちは七人家族でしょ?
ちゃんとね、
お魚にしたって、数分用意するんですよ。


たかが一匹、されど、一匹なんですの。
なので何としてでも取り返さねばと……。


ええ、あたしの様子見て、
まわりの人は笑ってましたよ。


そりゃ、無理もありませんよ。
いい、大人の女が
お魚加えたどら猫を
裸足で追っかけるんですもの。


笑われて当然です。


ええ、終いにはお日様も
笑ってましたわ。


いつぞやはね
町まで買い物に行きましたらね
なんと、財布忘れてるじゃないですか。


愉快ですって?


話になりませんよ。


結局、その日のお夕飯は
用意出来なかったので
鰻を取りました。
ええ、出前です。


会計?


もちろん、父ですわ。


ルール、ルルッルー


今日もいい天気だこと。


あらいやだ。
少しおしゃべりがすぎたようですわ。


あたし、そろそろお暇を……。


ええ、それじゃあまた来週……
じゃんけん……









いえ、
戯言はこの辺にしておきますわ。
いつかまた気が向いたら
あたしの戯言に
付き合ってくださいな。
ええ、いつか、









そのいつかの日まで……。
ごきげんよう。
















【エピローグ~猫を追いかける女】








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