ツンデレ社長と小心者のあたしと……


階段を降りると、社長は自然にあたしへ右腕を差し出した。


それは腕を組む事を示している。


「写真とか撮られたらどうするんですか?」


嬉しい気持ちを隠し、お断りすると、


「撮りたきゃ撮ればって感じ。別に俺は構わないけど」


社長はそうあっさりと言ってのける。


これまでの付き合いで……と言っても仕事に関することばかりだけれど、彼の性格は多少分かっているつもりでいる。


こんな時は、誘いに乗らないと不機嫌になる、そういう人だ。


それは彼に近付きたい自分自身への言い訳でもあったけれど、そう考えると少し気持ちが楽になる。


緊張がバレるのを承知でゆっくりと社長の腕に自分の腕を絡ませた。


「ちょ、胸押しつけんな。誘ってるのかと思うだろ?」


「そんなつもりじゃ無いんですけど……でも……」


しっかりとしがみつかないと都会の雑踏では彼とはぐれてしまいそうだった……。


うーん、これも言い訳、かな?



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