Sweet*Princess



いくら考えてもその答えはわかるはずもなくて


俺は姫乃を見つめたまま途方に暮れた。





俺は、あの頃の俺じゃない。



一人で、ベッドの中で小さくなって


枕を濡らす弱虫な俺じゃない。








なのに。







怖いんだ、すごく





雅兄は、何でも手に入れる。



欲しいものも


欲しくないものも



すべて雅兄の手の中にあって



俺はそんな雅兄をいつまでも


羨ましそうに見ているだけしかできないんだ。





「姫、乃……」


触れようとして、その手を引っ込める。



あぁ、俺は



いつまでも弱虫なんだ




立ち上がって、机の引き出しに入っていた手紙を取り出す。





俺の、精神安定剤。






「咲華、さん………」





「壱斗…?」



ッ……!!



「姫、ごめん、起こした?」


「ううん。目が覚めたら、壱斗が横にいなかったから」


「ん、ごめんな」



そっと頬を撫でてやると、姫乃は気持ちよさそうに目を細めた。



そうだ、信じろ、俺。


俺が好きなのは、姫乃だ。


だってこんなに愛しいから



「愛してる、姫乃」


そっと抱き寄せて、そのままベッドに入る。


愛しい温もり。



簡単に、手放してたまるか



*
< 138 / 231 >

この作品をシェア

pagetop