Sweet*Princess



荷物は少し重いし、帰り方もわからない。


雅斗さんに電話しようと携帯を取り出す。


そして、出て行こうと振り向いた、瞬間




「……っ」


ドアにもたれる彼は、私を無表情で見つめていた。




「あ、えっと……」


まず


勝手に部屋に入ったことを謝らなきゃだよね。



「あの、勝手に部屋入っちゃって、ごめんなさい!荷物を、取りに来て……」


彼は何も言わない。


私は怖くて、彼の顔を見ることができなかった。


……別に


話すことなんて何もないもんね。


とりあえず、謝ったから……帰ろう。



「じゃ、失礼します」



足早に歩く。


もう、この空間にいるのが辛かった。



彼の隣を過ぎようとした時



それはまた、一瞬で



わかることは今



愛しい彼の匂いに包まれていることだけだった。






「……っ」


荷物は肩からずり落ちて、携帯は彼に奪われていた。



「雅兄に、電話?」


雅斗さんに電話をかけようと、アドレス帳の雅斗さんのところを開いていた。


彼はそれを見ると、私の目の前でそのページを閉じた。



*
< 219 / 231 >

この作品をシェア

pagetop