私は男を見る目がないらしい。
 



「……オシャレなお店ですね……。高そう……」

「あ、心配しなくても大丈夫ですよ?実は下見で一度だけ来たんですけど、すごくリーズナブルなんです。このお店」

「そうなんですか?っていうか、下見ですか?」

「あっ、いえいえ。その言葉は忘れてください」

「……はぁ」


リーズナブルと言われても、目の前にあるレンガで囲まれたヨーロッパを感じさせるお店の立派な外観にやっぱり私はぽかんとしてしまう。

そんな私を横目に、長谷部さんがくすくすと笑いながらそのドアを開ける。

カランと鈴がなり、中からいらっしゃいませという声が聞こえてきた。

先に中に入った長谷部さんは自分の名前を告げながらも、私のためにドアを押さえていてくれた。

スマートにエスコートしてくれる長谷部さんに感心してしまった。

こんな人、今まで私の周りにはいなかったから。

彼氏にだって一度もされたことはない行動だ。


店の中に入ると、ヨーロッパ風のお洒落な絵画や置物がところどころに置かれた通路に導かれ、つい魅入ってしまいながらも私は長谷部さんの背を追う。

角にある個室(とは言っても周りから見えないようになっているだけで、完全な密室ではないけど)に通され、メニューを差し出された後、店員さんが去っていった。

「どれにしましょうか?」と長谷部さんがメニューを開いてくれたけど、本当にたくさんの種類のビールがあって、何にすればいいか悩んでしまうくらいだった。

直感で適当にビールを選び、お互いに食べたい料理をピックアップして、店員さんを呼んで注文した。

 
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