私は男を見る目がないらしい。
 

最寄の駅に着き、私と長谷部さんは逆方向の電車に乗ることを知る。


「じゃあ気をつけて帰ってくださいね」

「あ、はい。長谷部さんも気をつけて」

「俺は男ですからね。変なのが襲ってきても立ち向かいますよ。でも相原さんは女性ですから」

「あははっ、大丈夫ですよー!私を襲うような奇特な人はいませんからっ」


証拠に年中満員電車に乗っているけど、一度も痴漢には遭ったこともないし。


「ダメですよ。相原さんは素敵な女性ですから、襲いたいと思う輩はそこら中にいます。気を抜かないようにしてくださいね」

「!……長谷部さんって面白い方ですよね」

「え?」

「合コンの時もそうでしたけど、こんな私を女扱いする人ってそんなにいませんから」

「……ですか?じゃあ相原さんの周りの男は、女を見る目がないんですね」

「へ?」

「……俺にとっては、相原さんは本当に魅力的な女性です。……っていうの、覚えててくださいね」

「っ!」

「あまり急に近付いて引かれるのも困るので、今日はこの辺にしておきます。少しずつじりじりと攻めていこうと思います」


言われ慣れない言葉を言われて言葉を失ってしまった私に、長谷部さんが少し意地悪に笑う。

 
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