私は男を見る目がないらしい。
朔太郎が頭を下げてたっぷり1分以上経った頃、その男性が柔らかい表情になって肩をすくめてふぅと息をついた。
「……小西くん、頭を上げて」
「……お願いします……!」
「……今は頷けない。わかるだろう?」
「……はい。でも、必ず、広瀬さんのご要望に応えさせていただきますから!ご検討ください!」
「まったく。変わらないね。あの頃と」
「……申し訳ありません」
沈黙が二人を包みこむ。
「そういうところ、嫌いじゃないがね。ほら、頭上げて。私が君をいじめているように見えるから」
「!……申し訳ありません」
ゆっくりと頭を上げた朔太郎の視線が一瞬ハッと私を認め、止まった。
でもすぐにきゅっと唇を引き締めて、男性の方に向いた。
「……弊社の製品は他に負けないと思ってます。開発はもちろんのこと、お見せした資料の通り分析評価もしっかりしていますから、胸を張って勧めさせて頂きます。……どこにも負けない信頼できる製品です」
「……まったく。ここまで言っても諦めないとはね。本当に強情だ」
「……それだけが取り柄ですから」
「……ふ、確かに。……そうだな」
「……」