私は男を見る目がないらしい。
 

「いや、オフィスラブってそんな感じだろ?男と女が残業して、いい雰囲気になって愛を深めるみたいな?ほら、この暗さもちょうどいいし」

「は?意味わかんないんだけど。っていうか、家まで帰るくらい私一人でも大丈夫だし、先に一人で帰りなよ」


オフィスラブとか、愛を深めるとか、私と朔太郎との間にはもう不要な言葉のはずなのに、今更そんなことをいけしゃあしゃあと言ってくる朔太郎のことが全く理解できない。

……というか、この約2ヶ月間で朔太郎の理解のできなさには慣れてしまいつつあるけど。

こういう時は適当にあしらうのがいいということも、学んだ。

……そうすることで、私が傷付かなくて済むということも。

いつから朔太郎はこんな男になってしまったんだろうか?

高校の頃はもっとわかりやすかったし、真っ直ぐだったのに。

……とは言っても、別に私のことを見てくれてたわけじゃなかったみたいだけど、さ。

かちゃりと鍵を閉める。

他の部屋の鍵は全部閉めたし……よし。

戸締り完了。

さっさと帰ろう。

くるっと踵を返して朔太郎に背中を向けたときだった。


「……意味なんて、簡単にわかるだろ?」

「え?な、なにっ!?」

 
< 196 / 278 >

この作品をシェア

pagetop