私は男を見る目がないらしい。
 

……付き合っていた時、ある言葉を朔太郎によく言われていた。

それはたった今言われた言葉に似た、「恥ずかしがり屋の美桜がかわいくてたまんない」って言葉だ。

それに、ホクロの位置はあってるし(太ももの付け根のところは知らないけど!)、キスマークのことは……何よりも私自身がよく知ってることだ。

……てことはやっぱり、正真正銘、この男は朔太郎ってことだ……。

元カレがこんな風に姿を変えて自分の前に現れるなんて、作り話の中だけだと思ってたのに……まさか自分がそうなるなんて。

人生って、何が起こるかわからない……。

やっと目の前にいる男を朔太郎だと認めた私は、朔太郎のことを見上げて、ハァと息をついた。


「……もう、びっくりさせないでよ。心臓に悪いから」

「あ、やっと俺のこと思い出してくれた?いやー、悪い悪い。ちょっとは驚くだろうな~とは思ってたけど、そんなに驚いてくれるなんて思わなかったし。でも“表向きクール”な美桜が想像以上に驚いてくれて、してやったり、って感じはするけど。くくっ」

「……はぁ。朔太郎のそういうところは全く変わらないんだね」

「ん、そう?まぁ、体型がどうなろうと生まれ持った性格は変わんねぇしな」

「……まぁ、そうだね。それ、間違いない」


「だろ?」と朔太郎がにっと笑う。

まだ見慣れないその姿に、少しだけ心臓の鼓動が速くなるのを私は感じる。

 
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