私は男を見る目がないらしい。
 



もう、ボロボロだった。


「……朔のバカ……っ!うぅ……っ」


家に着いた途端、溢れ出した涙。

外で泣かなかった自分を誉めてあげたい。

私はボタボタと涙を溢しながら、ベッドに向かい、ぼふんっと身体を放り出した。

ギシッギシッとベッドが揺れる。

やっと消せそうだった気持ちが再び顔を出してしまった。

いや、無理矢理押さえ込んでいた気持ちが引きずり出されたんだ。


「も、やだぁ……っ」


止めどなく溢れてくる涙を止めたくてシーツを顔に押し当てるけど、全く止まってくれない。

何で消えてくれないんだろう。

あんな男、すぐに嫌いになるはずだったのに。

それくらいの酷いことをされたのに。

どんなに突っぱねても、突っぱねても……こうやってすぐに私の心の中をいっぱいにする。

胸がきゅーって締め付けられて苦しい。

……まだ、こんなに朔太郎のことが好きなんだ。

でもまた信じて、裏切られるのが怖い。

朔太郎はそういうことをする男だ。

もう、切り刻まれるような痛みを感じるのは嫌。

そうなるくらいなら私のことをちゃんと見てくれて大切にしてくれる人のそばにいた方が絶対に幸せになれる。

長谷部さんならきっと大丈夫。

きっと好きになれる。

そう思う。

……そう思わないと、この気持ちはいつまで経っても私の中から消えない。

……もう、忘れる。

朔太郎のことは、忘れよう。

 
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