私は男を見る目がないらしい。
「私がどれだけ辛かったか知らないでしょ!?なのに、笑顔で飄々と現れて振り回して……もうついていけない……っ!」
「美桜……っ、」
「やっと朔太郎のことを忘れさせてくれそうな人に出逢えたの!彼は私と付き合いたいって言ってくれてるし、私のことだけを真っ直ぐに想ってくれてるの!だから、もう、朔太郎にこんな風に触れられるのは困る!私は彼の気持ちに応えたいと思ってるか、んぅっ!」
両手を絡め取られて頭上で壁にどんっと押し付けられるようにして、朔太郎に唇を塞がれる。
その乱暴なキスは、もうそれ以上は話させない、というように、口で息をする余裕も与えてくれない。
涙が溢れてくる。
苦しくて唇の力が緩んでしまうと、その隙間から朔太郎の舌が入ってきて、私の口内を乱暴に暴れまわる。
手を拘束されて何もできない私はせめてもの抵抗で首を振って顔を反らそうとするけど、唇が離れようとすると朔太郎は追いかけてきて、顎を掴んで再び塞ぐ。
「んん……っ、んっ」
何で私のことを振り回すのっ?
私のことを先に捨てたのは朔太郎でしょ?
私のことなんてどうでもいいくせに……!
あんなにかわいい彼女だっているのに、キスしてくるなんて最低すぎる……!
こんな苦しい気持ち、もう忘れたいの!
耐えられなくなった私は口内を暴れまわって刺激してくる朔太郎の舌をカリッと噛んだ。
「つっ!」
「はぁ……っ!もうっ、私に構わないでよ……っ!」
「美桜っ!」
私は朔太郎の呼び掛けを振り切るようにして、その場から走り出した。