私は男を見る目がないらしい。
 

「……そんなの、また口だけでしょ?」

「何で嘘つく必要があるんだよ。ていうか、俺、美桜を陥れるような嘘はついたことねぇからな?美桜を俺の方に振り向かせるための嘘しかついてない。……お前のことが本当にめちゃくちゃ好きなんだよ」

「っ!」


朔太郎の視線は真っ直ぐと私を貫く。

嘘をついてるなんて思えないくらいの真っ直ぐな視線に揺らぎそうになる。

……信じてみようか、という気持ちが小さく生まれた。

ここで朔太郎を信じれば、前みたいに戻れて、また朔太郎と二人で楽しく笑い合えるんじゃないかって。

……でも、ダメ。

痛いくらいに学んだでしょう?

朔太郎は真面目な顔をして、平気で嘘をつく。

信じちゃいけないんだ。

信じてしまったら……また私は同じことを繰り返す。

私は崩れそうになる気持ちを振り払うように、頭をぶんぶんと横に振る。


「……もう、朔太郎の言葉は信じない……っ」

「信じろよ!本気で言ってんだから!」

「嫌っ!これ以上、信じてた人に裏切られるの怖いの。みんな、私を裏切るんだから……っ!誰も信じない!」


掴まれていた手が一気に引かれ、あっという間に私は朔太郎に抱きしめられていた。

久しぶりの朔太郎の熱に自然と心臓の鼓動が速くなっていく。


「嫌……っ!離して!離してよっ!!」

「俺は美桜のことは裏切らない!絶対だ」

「っ、絶対なんて言葉、軽々しく使わないで!そんなこと言いながら、朔太郎はどうせまた簡単に私を裏切る!朔太郎は私が慌ててる姿を見るのが楽しいのかもしれないけど、私はもう耐えられない。無理。もう、私のことなんてほっといて。離してっ!!」

「!」


私は力の限り、朔太郎の身体をドンッと押した。

その時、ちらっと目に写った朔太郎は……傷ついた表情をしていた。

でも、私はそれに構わず、朔太郎に背を向けてその場を逃げ出した。

……朔太郎は追いかけてこなかった。

 
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