私は男を見る目がないらしい。
でも、今は朔太郎もこんな風に笑い話にしてくれてるし、今更別れた原因をほじくり返して“嫌な女”を返上しても全く意味のないことだろう。
それなら、私も笑い話にして、軽く返すべきだ。
「……華麗すぎるって。世の中の女子に聞かせてあげたいわ」
「くくっ、だろ?羨ましいだろ」
「……そうだね」
こんな風に過去のことをさらりと笑い話にして流してしまうところは、今も昔も変わらない。
いい意味でも、悪い意味でも。
でも何となくだけど……今はもっと、なんか……大人になったんだな、と感じさせる言い方と雰囲気だと思った。
“やっぱり8年って人を変えるんだな、姿も中身も”、と手すりに肘をついて腕の上に顔を乗せて、私は外に広がる夜景を眺める。
街のネオンや車のライトがキラキラしていて、すごく綺麗だ。
湿った生ぬるい風が吹き、私の髪の毛をふわふわと揺らす。
私は何か変わったのかな、とこの8年間のことを思い返しながらぼんやりと夜景を眺めていると、ふとすぐ横に影が入ってきたのが視界の端に見えた。
首をふと少し動かして目線を移すと、そこには朔太郎が私と同じように手すりに腕を置いて柔らかい笑みを浮かべて、夜景ではなく私の方を見ていた。
どきっと心臓が跳ねる。