私は男を見る目がないらしい。
 

……たったの一度。

親に秘密で行った朔太郎との二人旅行。

学生でそんなにお金はなかったしそこそこ近場ではあったけど、一泊二日、すごく楽しくて幸せだった。

はじめて一緒に迎える朝はすごく照れ臭いんだろうな、と思いながら眠りについたけど、朝が弱い私はなかなか起きることができず、朔太郎は呆れてた。

その後すぐ、「飯、食いっぱぐれる!」って怒られたこともいい思い出だ。

ドタバタ食事に行くことになって、照れなんてどっかにいっちゃったんだよな……懐かしい。


「あの時は飯食いっぱぐれるとこだったんだよなー。すっごい覚えてる」

「あの頃の朔太郎は、ご飯第一!だったもんね」

「まぁな。でも育ち盛りだったし、それが普通だろ?」

「……何か違う気がするけど」

「くくっ、やっぱり?あの頃はなー、食うことに命かけてたからな」


美味しそうに食べてる姿を見るのも好きだった。


「今も変わらず、ご飯第一!なの?」

「……さぁ、どうだと思う?」

「え?んっ、」


ちゅっと降ってきた朔太郎の唇。

ぺろっと私の唇を舐めて、離れた。

 
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