私は男を見る目がないらしい。
 

「…………仕事、してないんだ」

「……は?」

「だから……今、プータローってやつで。俺、働いてなくて、失業中」

「はぁっ!?なにそれ!?」

「黙ってたのは悪かったよ!でも言ったら……絶対、俺と復縁しようとは思わなかっただろ?俺、どうしても美桜が欲しかったんだよ!でもいつかは言わないとって思ってたけど……ずるずると言えないまま、今に至るっていうか」

「!」

「ごめん、黙ってて」


しゅんと頭を下げる朔太郎に、驚きすぎた私は何も言えない。

……仕事をしてない?

失業中!?

何で、そんな大事なことを黙ってるわけ!?

しかも、「有給で休み」だなんて嘘をついてまで!


「……信じらんない……っ!」

「うっ、悪かったって!マジでごめん!」

「そんな大事なことを言ってくれないなんて!」

「だから、怖かったんだって!仕事してない男と付き合う女なんていねぇだろ?美桜は何だかんだで真面目だし、働いてない男なんて相手しないと思ったし!」

「そういう問題じゃない!」

「そういう問題だろ!?」

「~~っ、」


朔太郎に一番近いのは私だと思ってた。

別に結婚の約束をしたわけじゃないし、ただの恋人だけど……でも、一緒に暮らしてるのに!

朔太郎が無職だということよりも、何も知らなかったことの方が悔しくて……信用されていない気がして、悲しくなった。


「……もしずっと言えなくても、ちゃんと仕事が決まって落ち着いたら笑い話にでもすればいっか、って思ってたんだよ」

「……」

「本当に悪かった。ごめん……」


かくん、と私の目の前で朔太郎の頭が下がった。

 
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