私は男を見る目がないらしい。
「……頼みがあるんだけど」
「……え?何?」
変な緊張感と共に、神妙な面持ちで言われて、ドキンと心臓が跳ねた。
嫌な予感、とまでは言わないけど、何か……
「……あのさ、ちょっと……、金貸してくれねぇ?」
「……はい?」
「いや、絶対返すし!変なことに使うとかじゃなくて、ちょっと必要で、さ。3万くらい、なんだけど……」
「……」
「……ダメ、か?ちゃんと返すから」
「……」
朔太郎の真剣な目が私を貫いてくる。
その目は嘘なんてついているとは思えなかったけど……でも、想像もしていなかった言葉に、私は言葉を失ってしまっていた。
金貸して、って何か……嫌だ。
とは思っても今朔太郎は仕事をしてないし、お金がないのは確かに仕方のないことで。
それに、こんなこと普通は簡単に言えるわけはないし、きっと悩んで悩んで私に言った言葉なんだと思う。
こんなに就活頑張ってるんだし、これから先ずっと、ってわけじゃないもんね?
それに、私が知ってる朔太郎は変に人を騙すような人間じゃない。
……嘘もつかないって約束してくれた。
だから、大丈夫だよね?
今だけ。
……今だけ、でしょ?