私は男を見る目がないらしい。
 

もやもやと考えていると、沈黙に耐えられなかったのか、朔太郎が慌てたように口を開いた。


「……っあー、悪い悪いっ。やっぱいいや。うん」

「え?でも」

「ごめん。変なこと言った。今の、忘れて」

「……でも、困ってるん、だよね?」

「……や、大丈夫大丈夫。うん」


ふ、と気が抜けたように笑ったけど、その笑顔が逆に心配になった。

大丈夫って言うけど、本当にお金が必要なら貸さないと困るよね?

本当に必要だからこんなこと言ったんでしょ?

それに……私が断れば、もしかしたら、他の人に、なんてこともあるかもしれないし……

そっちの方が何か嫌だ。

そうなるくらいなら、私が。

私には遠慮なんてしないでほしい。

悩んでしまった私が悪い。


「……いいよ?」

「え?」

「貸すって言ってんの!でも出世払いだからねっ!」

「……美桜」

「改まって言うから何事かと思ったし!」


私はけらけらと笑い飛ばす。

朔太郎の心が軽くなればいいと思いながら。

朔太郎のこと信じるって決めたんだもん。

ちゃんと就活もしてるし、絶対に変なことにはならない。

大丈夫。

 
< 91 / 278 >

この作品をシェア

pagetop