恋物語。



―それから数日。


月は替わり、今年も残り一ヶ月となっていた。

あれからの高橋さんはというと…電話で朱里に言われた通り、
鈍感な私でも分かってしまうようなアプローチが増えてきた。

それに気後れしてしまって、まだ聡さん(彼氏)のことが言えずにいるのも、一つの原因なのかもしれないということが今になって、ようやく分かる。


だから、どうにかして聡さんの存在を知らせなければ…―。




「…あ、坂井さん。ここ居たんだ?」



「あっ…はい…」


今日も休憩室でポットの準備をしていた時、高橋さんに声をかけられた。




今日こそ…今日こそ言わなきゃ…。




「あのっ…高橋さ…っ」



「俺…坂井さんが好き。アピールしてたつもりだけど…そのこと気づいてた?」


あの時と同じように私の言葉を遮る、高橋さん。
真剣な目で見つめられて言おうと思っていた言葉が出てこなくなる。



「あ、えと…全然…」



「だよね?坂井さん鈍感だもんなぁ…でも…っ」



「…坂井さん。」


高橋さんの言葉を遮り、私の名前を呼ぶ声。
その声に二人で振り向き私は驚愕した。



「っ…!!!!」




さっ…聡さん…っっ!!




休憩室の入り口に片腕をつき、その人は立っている。

彼が今日ここにいるのは、もちろん知っていた。
コラボ企画商品の売り上げ報告だったり打ち合わせだとか…。


だけど急すぎる彼の登場に私は驚きを隠せず言葉が出ない。




「高橋さんと二人で話がしたいんだけど…外してくれないかな?」



「え、あ…はい…」


ようやく出てきたのは了解の言葉。
それだけを言い残して私は休憩室から立ち去った。





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