恋物語。



【another side】



彼女のあとを追うように休憩室の方へと向かっていく“彼”の姿を目の当たりにし、居ても立ってもいられなくなった俺は適当な言い訳で打ち合わせの席から外れることができた。


だけど怪しまれないように、あまり時間はかけられない。手短に済ませなくては…。




「…何ですか?俺と話したいことって。」


その場にいた彼女を休憩室から出し、彼…高橋さんが放った一言。



「あ、いや…坂井さんと、ずいぶん仲良いんだなっと思って。」



「あぁ…まぁ同じ会社で働く者同士ですからね。仲悪いよりはいいんじゃないですか?」


無難なことを尋ねると無難な答えが返ってくる。
ここは…はっきり言わないと分かってもらえないようだ。



「うん、まぁそうだけど……これ以上、彼女に近づくのは止めてくれない?」



「は…?何で他社の井上さんに、そんなこと言われなきゃいけないんですか?」


俺がそう言うと明らかに怪訝な顔になり突っかかってくる。



「確かに…仕事上では部外者かもしれない。だけど…彼女は俺のものだ。」



「え…!?マジですか…?」


彼は本当に何も知らなかったらしい。
目をパチクリさせて驚いているのだから。



「マジに決まってるでしょ。じゃなきゃ、こんなこと言わない主義なんで。」



「……んなの…勝てる訳ねぇじゃん…。」


彼は呟くように言葉を吐き捨てると、その場から足早に立ち去ってしまった。



「はぁ…」




全く…知沙には危機感が足りなさすぎる。
もう一度、ちゃんと分からせてあげないと…。




「ダメな子だなぁ…ほんとに。」





【another side】END



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