恋物語。
「うん。じゃあ行こっか」
「ぇ…」
そう言うと同時、手を握られた。
「ん…?どうした?」
「あ、いえ…何でもないです…」
少し驚く私を不思議そうな顔で見つめる井上さんにそう返した。
「そう?ならいいけど」
そう言って井上さんは歩き出す。その手に引っ張られるように私もあとをついていく。
ドキドキドキドキ…
もちろん…男の人と手を繋ぐのなんて初めてのこと…。
この前、体験してしまったキスの方がドキドキするんではないのかとずっと思っていたけど…こっちの方が断然ドキドキするかも…。
手の温もりとか…私とは全然違う、ゴツゴツと骨ばった感じとか…。やばい…ドキドキが収まらないよ…。どうすればいいの…!?
「っ…!」
すると突然、井上さんが立ち止まったので私も慌てて立ち止まる。
「…ここ。着いたよ」
「え…?」
そう言われて、お店の看板を見つめる。
「っ!!」
こ、ここって……あの超ー有名イタリアンレストラン…!?
そのお店の名前を心の中で読んでみて私は驚愕。
そこは今や全国展開もするようになったり数多くのメディアにも取り上げられるほど有名なイタリアンレストランだった。
「行くよ?」
井上さんはそう言うと再び私の手を引きお店の中へと足を踏み入れる。
「いらっしゃいませ、ようこそお越しくださいました。」
お店のスタッフの方にそう声をかけられた。
「こんばんは。予約していた井上なんですが…」
「!?!?」
う、うそ…!?わざわざ予約してくれてたの…!?
「井上様ですね、少々お待ち下さい…はい、2名様で伺っております」
スタッフの方は予約表なのか何やらノートのような物に目を向けてからそう言う。
「では、こちらへどうぞ。」
そしてそのまま席へと案内された。