恋物語。
「っ…分かってくれました…?」
『うん。まぁ…俺は知沙を信じてるけどね。』
「え…?」
じゃあ何でさっき…あんなこと…っっ
『だからさっきのは…“かまをかけた”だけっていうか。』
「っっ!!!ひ、ひどいですよっ…井上さん…っっ」
意地悪をされたことを知って、そう言い返す。
『あ。』
「え…?」
『…名前。また戻ってる』
「ぃ……今は無理です…っ」
朱里がいる目の前で…言えるわけないもん…っっ
『…ふ、分かったよ。2人の時に呼んでもらうから。』
もちろん顔は見えないけれど…口角をあげて、ニヤッと笑っている気がした。
『それじゃあ…また今度。』
「…はい。」
そう言って電話の通話(切)ボタンを押した。
「何、何、何、なにーー!?超―気になるんですけどっっ!!」
朱里の瞳は…好奇心という名のものでいっぱいに溢れている。
「水曜日、ね…?お昼一緒にどう?って誘われた…」
そんな朱里の視線に耐え切れなくなった私は…俯き眼鏡を触った。
「へぇーー!!!いいじゃん、いいじゃんっっ!!
でもさ…?知沙の会社って、あの人工島だよね?何でわざわざランチ…?」
やっぱり…この人も勘が鋭いと思った。
実は…私の会社は人工島の土地に建てられていて都心部に近い、朱里や井上さんの会社からすれば…まぁまぁ距離がある所だったりする。
だから今、私が話したことを聞いただけなら…“遠いのに何でわざわざランチなの?”と疑問を持ってもおかしくはないというわけ。
「えと…井上さんね…?水曜日、うちの会社の近くに来るらしいの。だからそれで…」
「へぇー!そうなんだ!あ……もしかして“あれ”かな?」
「へっ…?“あれ”って…?」
思い出したように言う朱里に私は顔をあげた。