恋物語。




―数分後。


有田さんから手渡されたものを身にまとった私。




「……。」




着てはみたものの…これって、うちの新作…?
何回眺めてみたって…部屋着のようにしか見えないんだけど…。




パステルカラーを基調とした、パイル地のこの服は…上は長袖、下はショートパンツ。
一見、セットアップのように見えなくもないけれど…私には部屋着にしか到底思えない。



「……。」




とりあえず…待ってるんだから入らなきゃ…。




意を決して応接間のドアをノックした。



『…はい。』



「失礼します…っ」


中から有田さんの声が聞こえたのを確認して、ノブに手をかけゆっくりと開く。



「着てみました、けど…どうでしょう…?」



「おぉーこうなるかぁ~。さすが井上だな。」



「いやいや、俺じゃないよ。うちの社員。」


私の姿を見るなりソファに向かい合って座っていた有田さんと井上さんがそう言う。




んん…?随分と仲良さげじゃない…?




「あのー……お二人は、お知り合い…なんですか?」


二人の間に流れる雰囲気を不思議に思い恐る恐るそう聞いてみる。



「まぁな。大学が一緒で。」



「あ…そうだったんですね。」


有田さんの話でようやく謎が解けた。




だから、あんなに仲良よさげに話してたんだ…。




「じゃあやっぱり…キミにお願いしようかな。」



「え…?何を、ですか…?」


井上さんがこちらを見てそう言うけれど…私には何のことだか、さっぱり分からない。



「実は…うちの社とax fam(アックス・ファム、私の会社名)さんとでコラボ企画の話が持ち上がって…インテリアとアパレルが関係するのはどこだっていう話から会議が始まり…今、キミ…坂井さんに着てもらっているルームウェアを作ろうという案になって…」




きっとこれだ…!朱里がこの間言ってた話って…。
だってこんなの…かなり大きなプロジェクトじゃん…っっ




「それで…うちの社とax famさんでデザインから素材、色まで綿密に打ち合わせをして…それが完成したんだ。」




そんなことが…水面下で行われていたんだ…。




「そうだったんですね。それでは先ほどの“お願い”というのは…?」




井上さんがここに来た理由は、じゅうぶん分かった。
だけど、さっき言われた“お願い”とこれ、どういう風に繋がるの…?





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