恋物語。
「あ、それは……坂井さんに、このコラボ企画のカタログモデルを引き受けてもらいたくて。」
・・・・・・・。
「えぇっ!?!?私!?私がですか…っ!?」
井上さんの言葉を理解するのに数秒かかり、自分を指さし驚きの声をあげた。
「そう。お願い…出来ないかな?」
「っ…」
そう言って井上さんは私を見つめる。
そ…そんなに見つめないでってば…っっ
っていうか、その目の奥で…“知沙”って優しい声で呼ばれてる気がする…。
そんな風に呼ばれちゃ、私…っ
「……はいっ…大丈夫、です…」
もう拒否なんて…出来なくなるの―…。
「坂井、よく引き受けてくれた!これは、うちにとっても重大なプロジェクトなんだから頑張れよ?」
有田さんは私が承諾したことがよっぽど嬉しいのか、意気揚々と私に声をかけてきた。
「はい…」
「ありがとう。これで胸を張って会社に戻れるよ。」
そう言う井上さんの顔も…とても嬉しそう。
「//…」
眼鏡のフレームを触り少し俯いた。
そんなに喜んでもらえるなんて…私も少し嬉しいかも…。
「で。撮影のことなんだけど…」
「あ…はい」
私は顔を井上さんの方へと向ける。
「うちの社のスタジオでやろうと思っていて…カメラマンもうちの人間に任せようと思っているんだ。」
「あ、はい。そこはお任せしますので…大丈夫です」
「そう?で、撮影日なんだけど…再来週の月曜日を予定しているんだけど…どうかな?」
「月曜日、ですか…?私、休みじゃ…っ」
「大丈夫!そこは有給扱いにしてやるから。」
眼鏡のフレームを持ち上げた時、有田さんが口を挟む。
「え…?いいんですか?」
私は有田さんの方を向く。
「言っただろ?これは、うちにとっても重大なプロジェクトだと。それに月曜日なら、一人欠けたって今の人数で充分回せるはずだからな」
「……分かりました。では、再来週の月曜日…よろしくお願いします」
私はそう言って井上さんに頭をさげた。