恋物語。
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「…いらっしゃいませー」
―あのあと。
聡さんから散々キスの嵐を受けたあと…“今日は午後半休”だという彼に連れられてパスタ屋さんへとやって来た。
「……。」
「どうした?知沙。…何か疲れてない?」
真向かいの席に座る彼は私の顔を見てそう尋ねる。
“疲れてない?”って…ほぼ、あなたのせいでしょー…!?
なんてことは絶対に言えないから…
「…別に…何でもないです…」
そう返すことにした。
「そう…?ならいいけど。それより何食べる?」
次はメニューを開きながらそう言う。
「え、あぁー…どうしようかな…聡さん、オススメとかあります?よく来られるんですよね?」
実はこのパスタ屋さん、聡さんの会社・INT Interから比較的近くにあるお店で彼はよく来ていると、さっき教えてくれた。
「んんー…ベタにナポリタンとか美味しいよ?あとはこれ、カルボナーラ」
聡さんはメニューを指さしながらそう言った。
「へぇー…そうなんだ…」
でも私、カルボナーラって苦手だから…
「じゃあ私、ナポリタンにします。」
「OK。じゃあ…俺はこれ。」
そう言って、あるメニューを指さす。
「えぇっ!?ミートソース?私にオススメしたカルボナーラじゃないんですか!?」
まさかのチョイスで私は驚いて彼を見つめた。
「今は濃いーものの気分じゃないから。」
彼は口角を上げてニヤっと笑う。
「っ…」
「あ、すみませーん。」
そして近くを通りかかった女性店員さんを呼んだ。
「はい、お伺いいたします。」
「ナポリタンとミートソース、一つずつ」
「はい、かしこまりました。では、ご注文の確認をいたします。ナポリタンとミートソースをお一つずつですね?」
「はい。」
「それでは、メニューをお下げいたします。」
女性店員さんはそう言うとメニューをたたみ、お店の奥の方へと消えていった。