恋物語。




「っ…」




聡さんはいつも…何でこんなにも優しいんだろう…?




「じゃあ行くよ?」



「ぁ…っ」


彼はそう言うと…私の手を握る。



「ん…?どうした?」



「あ、いえ…何でもないです…」


私はそう言いながら俯き眼鏡のフレームに触れた。



「ふーん…」


そう言って歩き出す彼に私はついて行く―。




たぶん、聡さんは気づいていると思う。

私が“男の人と手を繋ぐ”ことに慣れていないということを…。でも彼は…あえて、そのことには触れてこなかった。
けど別にそれはいいの…。もしもそれを聞かれたら…恥ずかしくってドキドキして…何も答えられないと思うから。


それより…―、




ドキドキドキドキ…ッ




好きな人と手を繋ぐって…やっぱり、すごくドキドキする…。
抱き締められたり、キスされるのとは違うドキドキがあって…


それに…聡さんの手は大きいから…っ




「っ…!」


その時、彼は自然と指と指を絡める繋ぎ方に変える。いわゆる…“恋人繋ぎ”




な、なに…!?繋ぎ方一つ違うだけで…握られる感覚も全然違う…っ
この繋ぎ方は…ゴツゴツと骨ばった聡さんの指がよく分かるというか…。




「あ、ねぇ…ここ入っていい?」


彼はそう言って立ち止まった。



「え…」


それに合わすよう止まった私も目の前に見える景色を眺める。



「……インテリアショップ…?」


聡さんが“入りたい”と行った所は…とあるインテリア雑貨ショップ。
ちなみに彼の会社“INT Inter”とは全く違うブランドだ。



「はい…いいですよ…?」



「じゃあ行こう。」


私の返事を聞いた彼は私の手を引いたまま、そのお店へと入っていく―。




このブランドは…

特に女子受けを狙ったインテリアや雑貨を多く取り扱うことで知られていて、まさに女性人気の高いブランドだ。
店内は主にピンクや黄色、オレンジといった明るい色を使った商品で溢れている。


正直、私も…このブランドは好きだったりするんだけど…。





< 69 / 148 >

この作品をシェア

pagetop