記憶の欠片

屋上から出て
全速力で日向のいる場所まで
走った。

翔に言われたからとかじゃなく
俺の身体が勝手に動いたんだ。


ガラガラ


「…日向っ!」

ドアを開けたら
日向が泣いてた。

「….友也くん…ごめんなさい」

「…どうして謝るんだよ?」

「…智、出来なかった。
友也くんが前にあっちゃんのこと
好きに近づいてるって言ってて、
智も変わりたかったから
翔くんと付き合ったの」

「….だけど、やっぱり人を
信じるのが怖くて
翔くんと近づくにつれて
心苦しくなって、辛かった。
せっかく好きって
言ってくれてるのに
好きって言えないことが
翔くんに申し訳なくて」

「…だから…翔に
ありがとうって?」

「…今までずっと…
好きでいてくれたから。
いつもいつも、優しく接して
くれたから。
だから翔くんに言ったの」

「….そっか。
…なら日向も翔も
…よく頑張ったな。
翔は今も日向を想ってるよ。
翔が別れを告げたのは
日向を想ってのことだから…」

「…わかってるよ。
智の過去を知ったから、でしょ?」

「…それも…あるだろうね」

「…えっ?」

確かに翔に日向の過去を
話したから。

それも翔が日向に
別れを告げた理由の
一つかもしれない。

でもあと一つは、


日向が俺の忘れられない人
かもしれないから。


だから翔は一歩引いたんだ。


「…日向。
今度の週末空いてる?」

「…うん」

「…ちょっと一緒に
行きたい場所があるんだ」

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