【BL】忘 れ な い
「綺麗ですねぇ。」
「桜を見ながらの酒は格別だな。」
「あなたにとって酒はいつでも格別でしょう?」
「はは、ちげーねぇ。」
彼は再び酒瓶を煽る。
「……なぁ、」
「はい?」
「……俺達は何のために戦っているんだろうな?」
彼は桜を見上げたまま。
僕は少し彼を見つめた。
今、この国は戦の真っ只中。
僕達はその戦のコマだ。
数多くあるコマの一つ。
「…さぁ、何のためでしょう?」
「…質問したの俺なんだけど。」
「僕にも分かりませんよ。ただ一つ言えるとしたら…」
そこで僕は彼から視線を桜へ戻す。
入れ違いで彼は視線を僕の方へ向けたようだ。
「明日も、明後日も……またこの桜を見上げたいから、でしょうか。」
戦とは死が隣り合わせ。
それは仕方のないことだ。