好きじゃない、はず。―ラブレター・マジック―

「どうしたの?急に」


肩からずり落ちそうになっているカバンをかけ直しながら結衣に尋ねる。

対する結衣は少し下を向いて覇気のない声で返事をする。


「うん……あの……」


あまりあたしと目を合わせようとしない。

ずっと廊下に注がれている結衣の視線。


「結衣?」


名前を呼んでも顔を上げてくれない。

なかなか本題を話してくれない結衣を気にしながらチラッと腕時計に目をやる。

チャイムが鳴るまであと10分。

まだ時間はあるけれど、いつまでもこうしていられない。


「もしかして、瀬戸の噂聞いたの?」


結衣が元気がない原因。

それしかないと思って、そう聞いてみた。

結衣はハッとした表情をしながら顔を上げる。


ビンゴ。


そう思いながらあたしは更に続ける。


「あんなの、ただの噂だよ」


そう言って笑うあたしに結衣は大きく首を横に振る。


「ちがっ……違うの!」


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