紅Ⅱ(クレナイ)~解き放たれる鎖~
「そうかも…しれないけど、でもね…」
「………」
「やっぱりありがとうって、瀬谷君に言いたい。瀬谷君のおかげで自分の気持ちが分かったんだもん」
「………フン」
鼻を鳴らした瀬谷君は、また私に背を向けた。
そして、歩き出す。
………でも、すぐにピタッと足が止まった。
「?」
「………慎…、でいい」
私に背を向けたままそう言った瀬谷君は次の瞬間、早足で歩き出した。
その足取りはまるでテレているように感じられ、私の口元が緩む。
「慎…」
ソッと、瀬谷君の名前を呼んでみた。
小さく名を呼ぶ私の声に返事をする事なく、瀬谷君はそのまま夜の闇へと紛れていった。
瀬谷君の背中を見送りながら、私は確信していた。
『慎…』と呼んだ、私の声が聞えていたって…。
獣の遺伝子を持つ瀬谷君は私と同じで、耳が常人よりはるかにいいはず。
だから、きっと聞こえていた筈だ。
聞えなかった振りをしたのは、テレていたんだろうな?と良いように解釈しておく事にする。