STORMILY
未成年の娘に聞かせる話ではないと思うのだけど、怒りのスイッチが入ってしまったお母さんは止まらない。


「思えば結婚前からあっちにフラフラ、こっちにフラフラ目移りしてたのよね。ありゃもう病気よ」


……だったら何で、そんな【ろくでなし】と結婚しちゃったの?


もっと誠実な人を選べば良かったのに。


なんて、心の中では強気で突っ込んでみたものの、当然、口には出せなかった。


恋心がそう簡単にコントロールできるものではないという事は、この年になれば一般論として分かっている。


「あ…。あんた、そろそろバイト行く時間じゃないの?」


突然、お母さんは我に返ったような表情になり、通帳を閉じながら言葉を発した。


「早く支度しなさいよ。遅れるわよ」


「…うん」


「奥に行くついでにこれ、タンスに仕舞って来て」


言いながら、お母さんは通帳を私に差し出した。


それを受け取ろうと、お母さんの手元に何気なく視線を合わせた所で、思わずギクリとする。


通帳を掴んでいるお母さんの指先が、小刻みに震えていたから。
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