STORMILY
私の視線に気付いたお母さんは、通帳を強引に押し付けてくると、自分の手をさっとテーブルの下に引っ込めた。


「何やってんのよっ。早く行きなさいってば」


「う、うん」


「あんたのバイト代なんて微々たるもんであっという間に消えちゃうけど、まぁ、無いよりはマシだからね。ちゃんと稼いで来なさいよ」


……そういうお母さんは、稼いで来てくれる気はないの?


養育費は本当は「子どもを養育する為」にもらうものなんだよ?


手が震えるほど大量のお酒を飲む為に、与えられているお金じゃないんだよ…?


お母さんの声を背中で聞きながら奥の和室へと移動し、私は心の中で呟いた。


リアルでは、やっぱり私はお母さんに何も言えない。


重い足を引きずるようにしてタンスの前まで歩を進め、一番上の引き出しを開けた所でふと、そこにあった別の通帳が目に止まる。


ダイニングを窺い、お母さんが向こう側を向いている事を確認した上で、持っていた通帳と入れ違いにそちらの通帳をサッと手に取り、素早く中を確認した。


……良かった。


こっちのお金には、今の所怪しい変動は見られない。


両親が私の誕生以降、将来に備えて毎月一定額銀行に預けてくれていたお金。


今はとにかく、昔はそれくらいの愛情は注がれていたのだ。
< 35 / 64 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop