ただ、そばにいて

──翌日。

午前十時の太陽に照らされてキラキラ輝く海と、ウェットスーツに身を包んで波に乗るナツを、海岸に座って眺める私は。

大きめのTシャツに、ショートパンツといういつも海へ来る時と同じ格好。

ただ、今日はその下に水着を隠している。


白地にピンクの花柄で、いやらしすぎず、可愛すぎないデザインのものにしたつもり。

別に見せるわけじゃないけど……なんとなく、着てみようかなって気になって。

昨日のナツの言葉が、うねる波のようにずっと頭の中をぐるぐる巡っているせいかな。


──『俺、もう“オトコノコ”じゃないからね?』



「知ってるよ、そんなこと……」



濡れた髪を掻き上げる彼に胸を高鳴らせながら呟き、折り曲げた膝に口をくっつけた。

いつの間にか完璧なオトコになっちゃって、何気ない仕草にも私がドキッとさせられてることに、あの子は気付いてないんだろうな。


ひとしきり波乗りを楽しんだ後、ボードを持ったナツが満足げな表情で私の隣にやってくる。



「楽しかった?」

「あぁ。やっぱり今日はオフショアだからね、いい感じ」



オフショアって、たしかいい波を起こす風が吹いてる時のことだっけ?

サーフィンのことはさっぱりわからないけれど、ナツが笑っているから私はそれだけで楽しい。

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